Exemplar of heritage: Fan Kuan and His influence in Chinese Painting
Time 2015/7/1-9/29
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タイトル:選択項目:范寛の画風が及ぼした影響

南宋以降、多くの画家が范寛(950-1031の間)の影響を受けました。例えば、蕭照(12世紀)の「関山行旅」と夏珪(1180-1230年前後に活動)の「山水」─この二作の鋳鉄を思わせる剛健なタッチは、「谿山行旅図」に相通じるものがあります。

明代と清代には「倣范寛」や「法范華原」、「擬范中立」と題する画家が大勢いました。そうした作品の画風は「谿山行旅図」とはやや異なりますが、范寛が後世の画家に高く評価されていたことがわかります。この度の特別展で展示される沈周(1427-1509)、文徴明(1470-1559)、藍瑛(1585-1664以降)、王時敏(1592-1680)、王鑑(1598-1677)、王翬(1632-1717)、唐岱(1673-1752以降)、周鯤(1736-1795)などの作品がこのタイプに属します。時代が下って清代末期から民国時代になっても、題跋で范寛に触れている作品は多く、その影響の大きさがよくわかります。

宋 蕭照 関山行旅

宋 蕭照 関山行旅

蕭照(12世紀)、濩沢(現在の山西省陽城県)の人。靖康の変(1126)が勃発した際、太行山に流れついて盗賊となったが、李唐(1131-1161)とともに南渡し、李唐を師として絵画を学んだ。紹興年間(1131-1161)に画院待詔となった。

『集古名絵冊』所収の第十幅である。作者の款印はないが、旧題は蕭照作とされている。斗方(正方形)の画面に郡山が描かれており、あたりに雲気が立ち込め、遥かな風景が広がっている。旅人の隊列がゆっくりと山間の小道を進んでいる。全体の筆致は剛健で力強く、墨色濃厚な皴線は重々しく、鉄を削るような筆法は范寛の風格にやや近い。構図は北宋の全景式大山から高山の一角のみを描く様式に変化している。南宋時代の范寛伝派による新たな展開と変革とみなすことができよう。

清 王翬 法范寛山水

清 王翬 法范寛山水

王翬(1632-1717)、字は石谷、号は耕煙散人。江蘇常熟(現在の江蘇省常熟市)の人。絵画は王時敏(1592-1680)と王鑑(1598-1677)の指導を受けたほか、歴代の名跡を幅広く臨模した。古今の筆法に通じ、南北の画風を融合させた。「清初六家」の一人に数えれられる。

この作品は惲寿平(1633-1690)、王翬作『花卉山水合冊』に収録されている。秋の日に紅葉した樹木に彩られる山と、のんびりと山道を進む旅人の姿が描かれている。画面左に自題「用范華原法」がある。近景に見える山石は范寛(950頃-1031の間)の雨点皴法を用い、複雑緻密に描かれている。深く生い茂る樹木には石緑と朱砂が施され、明るく色鮮やかである。遠方に連なる山々と空の色が互いに映え、虚実粗密の妙もまた見事である。