展示作品解説
宋 李唐 乳牛図
李唐(1049頃-1130)、字は晞古、河南河陽(現在の河南省孟州市)の人。徽宗朝の画院に召され、建炎年間に成忠郎に任ぜられた。その後、画院待詔となった。
牧童が牛の背に乗っている。その後ろをついて行く子牛は、首を伸ばして小さく鳴いている。牛の母子の情が写実的に表現されている。牛の身体は薄い墨で輪郭が取られ、筆先で渦のような毛流が描かれており、下腹は色をぼかして、牛の姿が見事に描写されている。背景の平坦な地面に生える青々とした草、岸辺の岩石が味わいを添え、静けさを感じさせる江南の景色が描かれている。画上に款印はなく、梁清標(1620-1691)による題籤には李唐作と記されている。
宋 銭選 煙江待渡図
銭選(1235頃-1307)、呉興(現在の浙江省湖州市)の人。字は舜挙、号は玉潭、巽峰など。元朝には出仕せず、生涯を通して書画の創作に取り組んだ。
山水画は趙令穣と趙伯駒に師法し、花鳥画は趙昌、人物画は李公麟に師事したが、前人の法に捉われることはなかった。この作品には、秋の山水が描かれている。山々のなだらかな斜面には硬さのある勾皴を多く用い、青緑山水の精緻かつ古雅な趣が表現されており、文人画らしい静けさに満ちている。細筆皴点で描かれた生い茂る木々にも清らかな美しさがある。平遠な構図で広大な空間が表現されており、脱俗の境地にある。画家は画上の題詩で、俗世を離れ隠遁したいと願う自身の思いを伝えている。
元 高克恭 画春山晴雨
高克恭(1248-1310)、字は彦敬、号は房山、先祖は西域出身、本籍は大同(現在の山西省)、後に移居して房山(現在の北京市)で老後を過ごした。この絵は大徳3年(1299)に李衎(1245-1320)のために描いた作品。高克恭が江南で暮らした最後の年に描いたもので、その後、都へ戻り工部侍郎に任ぜられた。
山水画は米芾と米友仁父子に学び、並べた横点と多層の暈染を用いる。この絵の構図は3段に分かれている。近景には雑多な樹木が生い茂り、中景は余白で雲ともやが表現されている。遠山は短い披麻皴を用いて、薄墨と青緑でぼかしてあり、奥行きの深さが感じられる。雨上がりの雲山の雄壮な眺めが表現されている。