伝元 趙孟頫 書急就章
本冊の旧題は「元趙孟頫書急就章」だが、研究者は兪和(1307-1382)の晩年の書とみなしていた。しかし、末尾の題跋をよく見ると、兪和による臨本だとわかる。
兪和、字は子中、号は紫芝生、杭州に寓居した。若い頃、趙孟頫から直接指導を受けたと伝えられ、書風が酷似しているため、判別が難しいとされる。この作品では、漢晋代の章草が持つ古朴な味わいが柔美なものへと変えられている。章草の長い横画と捺筆に波磔を用い、短い横画の収筆の多くは止めとなっている。独立した点のように見える箇所にも磔法を使い、短い横画では筆を軽く上げて出鋒とするなど、変化に富んだ筆致が見られる。