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鑑古遊芸─皇帝の銅鏡コレクション

古代の人々は光を反射する銅鏡の特性を見て、非常に貴重な物だと思いました。伝説では、鏡は黄帝が陰陽の精を融合させて鋳造したもので、長い年月を経ても錆びず、鬼神に通じることができると考えられていました。宋徽宗帝勅撰『宣和博古図』には、漢代と唐代の古鏡に施された仙人や四霊、五岳、八卦、十二支、蟠龍、鳳凰などの図像は天地万象の縮図だと記されています。また、鏡に鋳刻されている銘文は文学作品や人格修養の範例にもなりました。つまり、古鏡の研究によって教化という目的を達成することもできるのです。

清朝宮廷には漢と唐の銅鏡を中心に、少数ですが宋や金、元、明の銅鏡も収蔵されていました。これらの歴史ある銅鏡は自然に体系化され、外観も時代ごとに大きく異なります。2千年近くも連綿と継承されてきた工芸技術や美感、思想上の発展などが具体的に表現されており、文物から歴史を知る上で最良の範例となっています。

新莽-東漢早期 「仙人不老」博局鏡

新莽-東漢早期 「仙人不老」博局鏡

直径 20.3cm
『西清続鑑‧乙編』卷十九、5頁「漢仙人不老鑑」収録
「西清続鑑‧乙編‧第一冊」鏡匣に収納

円形の鏡。半球形の鈕と柿のへた形の鈕座があり、その周囲は二重線の方格で囲まれている。方格の内側に十二支を示す銘文があり、文字の間は乳丁で飾られている。方格の外側は博局紋で装飾されており、模様の間に連弧紋座の乳丁が八つある。隙間は四霊─青龍、白虎、朱雀、玄武などで埋められているほか、飛禽や瑞獣の姿も見え、細緻かつ複雑な模様が施されている。その外側に銘文がめぐらしてある。「尚方作竟(鏡)真大巧、上有仙〔人不知老〕。非回(徘徊)名山采芝草、渴飲玉泉飢食棗。寿而(同)金石〔天之保〕。由(遊)天下、敖(遨)四海。」銘文の外側は鋸歯紋で、外区は雲気紋でぐるりと装飾されている。博局紋と四霊、瑞獣の図案、十二支を表す文字、神仙思想を記した銘文の組み合わせは、前漢末期から新の時代にかけて流行した讖緯思想が反映されている。この鏡は「銅は輝きを放ち、古色豊かな色味もよく、銘文も美しく整っている。」とされ、『宣和博古図』巻二十八所収の「漢仙人不老鑑」と同じく、乾隆帝に「上上等」の古鏡と評価された。


隋-初唐 「玉匣」鏡

隋-初唐 「玉匣」鏡

直径15.2cm
『西清続鑑‧乙編』卷二十、19頁「唐玉匣鑑」収録
「西清続鑑‧乙編‧第二十九冊」鏡匣に収納

円形の鏡。鏡背は放射線状に広がる銀杏の葉形の模様八つで飾られ、交わる枝が鈕になっている。葉の間には繊細な水波紋があり、風に吹かれた葉が水面に揺れているようで、非常に趣深い。内区と外区は細い弦紋で分割されている。外区には周代の詩人庾信(513-581)の駢体詠鏡詩「玉匣初開鏡、軽風払去塵。光如一片水、影照両辺人。」がある。詩句の音韻も調和的で、端正な楷書体の銘文と鏡背の紋様が互いに呼応し、爽やかな印象を受ける。


盛唐 狻猊葡萄鏡

盛唐 狻猊葡萄鏡

直径15.6cm
「寧寿続鑑‧第二十冊」鏡匣に収納

円形の鏡。伏せた獅子形の鈕。鏡背は高浮き彫りの弦紋で内区と外区が分割されている。内区には7頭の獅子の模様があり、身体を丸めて伏せている獅子、振り向いたり、立ち上がっている獅子、転げ回っている獅子など、様々な姿で表現されている。立ち上がっている雄獅子の傍らには子供を連れた母獅子がいて、獅子の群れの暮らしぶりが丁寧に描写されている。外区は葡萄のツルがめぐらされており、柔らかな葡萄の実や葉が写実的に表現されている。外区には葡萄のツルの間に見え隠れする6羽の鳥と駆け回る8頭の瑞獣で装飾されている。ツルの間に見える鳥は6種いて、軽く柔らかな羽根の様子が繊細に描写されている。縁は巻草紋で飾られている。鏡全体を彩る生き生きとした描写から製作者の自然に対する敬愛の念が感じられ、野趣に富んでいる。


南宋 双龍古鼎形鏡

南宋 双龍古鼎形鏡

展覧期間:
2015/03/31~2015/09/17
2016/09/19~2017/02/26

 

高さ16.25.5cm 幅12.1cm
『西清続鑑‧乙編』卷二十、6頁「漢古鼎双龍鑑」
「西清続鑑‧乙編‧第十六冊」鏡匣に収納

双耳双足鼎形鏡。鏡背中央にある細い鈕で支柱に固定して使用した。鼎形の首には捲草紋が浮き彫りされている。腹には高浮き彫りの双龍拱珠の模様がある。宋代によく見られた双龍紋と同じく、龍の口は一開一閉となっている。双龍の下には海水紋があり、縁は三角形に高く盛り上がっている。