文物紹介
この金碗は描金皮張りの円形木製盒に収納されている。蓋裏の白綾に金碗の来歴が4種の言語─漢語、満州語、モンゴル語、チベット語で記されている。「乾隆四十九(1784)年十二月十七日哈密札薩克郡王品級貝勒額爾徳希爾呈進金碗一件。」考証によれば、札薩克郡王六世額爾徳希爾は、乾隆帝の命によりその一族が爵位を世襲できた返礼として、この金碗を進呈したとされる。新疆からもたらされたこの金碗は、掐絲技法を用いた花葉紋で口縁と高台が装飾されており、腹部は彫刻の石榴と掐絲の花葉紋で飾られている。このほか、黄金に細かな金珠を定着させる、かなり特殊な工芸技術を用いて、ごく小さな金粒を装飾の地としており、表面が金珠で覆い尽くされている。魚子紋と同様の彫刻技法だが、独特の質感があり、異境の風情が感じられる。高台の裏に陰刻双鉤の楷書款「乾隆御用」がある。乾隆帝御用器である。