筆に千秋の業あり,展覧期間  2017年4月1日至2017年6月25日,北部院区 会場 204、206
筆に千秋の業あり,展覧期間  2017年4月1日至2017年6月25日,北部院区 会場 204、206
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展示概要

書法とは、漢字文化圏特有の芸術であり、古くから中国文化の伝統の中で体系化され、日常生活にも深く根付き、古今を通じて人々に親しまれています。古より今に至る中国書道史発展の過程には、多くの人々が深い関心を寄せており、この度の特別展はそれらをご覧いただくために企画されました。

秦漢時代(前221-220)は書道の発展における重要な転換期です。まず夏、殷、周三代以来、枝分かれしていた古文と大篆、銘刻が統一され、標準的な書体─小篆が誕生しました。一方、春秋戦国時代に登場した隷書は篆書が簡略化されつつ成熟し、漢代には一般的な書体となりました。簡略化を推し進める風潮が盛んになるにつれ、隷書も変化と分化を繰り返し、その結果、草書と行書、楷書が生まれました。書体は絶えず変遷を繰り返し、魏晋南北朝(220-589)に至ると、過渡的な書風や書体の入り混じった表現が現れるなど、長い年月をかけて変化する中で、結体や筆法が自ずと規律化されていく様子が見てとれます。

続く隋唐時代(581-907)も重要な時期の一つにあたります。政治上の統一によって南北各地の書風が合流し、筆法が完成され、楷書が歴代を通じて使用される書体となりました。宋代(960-1279)以降、著名な書家の書蹟を後世に伝えるため、法帖が盛んに作られるようになりました。しかし宋代の書家は古典の継承だけでは飽き足らず、自分の個性や自然の趣を表現しようとしました。

元代(1279-1368)に至ると、復古が提唱され、晋唐時代の書法の伝統が継承された一方、伝統に束縛されない意識もしだいに高まり、明代(1368-1644)になると、縦横に筆を揮う奔放な書風が登場しました。明人の書は非常に多彩な様相を呈し、行草書の表現は特に自由奔放で、当時のあくまで伝統に則った書法と対比をなしています。その間に個性を発揮して自らの書風を確立した書家も時代の波に呑まれることなく自己表現の道を歩みました。

清代(1644-1911)以降は、三代及び秦漢時代の古文や篆書、隷書などが相継いで出土しました。これは書法にとっては天の恵みだったと言えましょう。実証的な考証学が勃興する中、書道界にも金石学が興り、刻石と法帖を照らし合わす事によって、書法の発展に古今の繋がりが見出せるようになったばかりでなく、篆書と隷書から古きを学びつつ新しい創造を目指すことが可能となり、新たな方向性が導き出されたのです。

展示作品解説

唐 褚遂良

臨王献之飛鳥帖

  1. 形式:卷
  2. サイズ:22 x 47.4 (cm)

「飛鳥帖」は王献之が飛鳥より書訣を授かったことを自ら記述したもので、唐宋時代から伝わる神仙伝説の一つでもある。巻末に元代の柯九思と王守誠による題跋があり、この帖は唐人の臨書だとしている。収蔵記録を物語る印記から判断するに、南宋以前に書かれたものと思われる。

褚遂良(596-659)、文学と歴史を広く学び、楷書と隷書に優れていた。その書は妍媚と評される。流れるように滑らかな書体には韻律感があり、用筆は細いが力強く、疎らな感がある。この作品は褚遂良の真蹟ではないが、褚書を代表する作品の一つとみなすことができよう。

宋 常杓

篆書宋人詞

  1. 形式:冊
  2. サイズ:24.5 x 11.1 (cm)

常杓(13世紀初頭)、常杓の生涯については今後の研究が待たれる。

篆書は中国で最も古い字体で、商(殷)代の甲骨文字から秦朝の小篆まで、一千年あまりの長きに渡って用いられ、年代や地域差により各種の字体が誕生した。これは南宋宝慶3年(1227)に書かれた冊である。一段目は蘇軾の「哨徧」が小篆で書かれている。二段目は青銅器の銘文を元に書かれた「盤谷序」で、筆画の始まりと終わりはやや細く、中段で太くなる。三段目には小篆で「紅白蓮詞」が書かれている。小篆は唐代の李陽冰を模しており、丸みある力強い筆致に古風な趣が漂う。

六朝前秦 蘇蕙

璇璣図

  1. 形式:卷
  2. サイズ:28.1 x 246.3、28.1 x 89、28.1 x 128.4 (cm)

蘇蕙、字は若蘭、前秦時代(351-394)の秦州刺史竇滔の妻で、詩文をよくした。遠方の夫へ「璇璣図」という詩でその思いを伝えた。

「璇璣図」は方形の漢字の視覚的な特性を生かした詩で計840文字あり、各行29文字、29行からなる。整然と並んだ文字はどの方向からでも詩として読むことができ、多数の詩文が含まれており、蘇蕙の才華と聡明さがよく表れている。この作品には「璇璣図」全文が楷書で抄録されている。美しく整えられた秀麗な筆跡だが、蘇蕙の手書きと断ずる根拠はない。

民国 丁衍庸

草書五言絶句

  1. 形式:軸
  2. サイズ:137.5 x 68.4 (cm)

丁衍庸(1902-1978)、広東省茂名市出身の書画家。早年は日本の東京美術学校で西洋の油彩画を学び、帰国後は多くの芸専や美術学校で教鞭を執った。国画では新しい技法を試み、画風は八大山人の影響を受けたが、生き生きとした線や景物を誇張して変形させる手法により、水墨画の世界に新たな境地を拓くとともに独自の個性を発揮した。

丁衍庸の書法はそれほど知られていない。この作品には草書で五言絶句が書かれている。「堆清尋冒雨、白雪已盈盤。為問陶彭澤、花黄楓自丹。」奔放自在な用筆、滑らかな筆意など、丁衍庸の絵画と書法には異曲同工の妙がある。

展示作品リスト

年代
作者
作品名
形式
サイズ (cm)
漢人
曹全碑墨拓本
61.5x52
陳叔毅
修孔子廟碑
18x10
褚遂良
臨王献之飛鳥帖
24.8x12.6
蔡襄
尺牘
28.7x15.3
常杓
篆書宋人詞
123x74.3
六朝前秦
蘇蕙
璇璣図
27.9x85.4
俞和
篆隸千文
31.3x43.1
王寵
書雑詩
25.5x33
董其昌
書白羽扇賦
26x362.5
沈荃
桃李園序
191x72.2
汪由敦
臨蘇軾杜子美詩
27.4x505.1
民国
丁衍庸
草書五言絶句
24.9x29