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展示概要

 乾隆帝の書画コレクションはむやみな収集により築かれたものではありません。乾隆帝はこのために時間を割いては作品を味わいつつ詩文を詠み、その作品のよさを見出すことのできる収蔵家でした。この度の特別展では、乾隆帝の在位期間中に6回行われた南巡の面から考察を加え、巡行中の書画題詠を通して、乾隆帝とともに旅をした書画作品を選出して展示いたします。乾隆帝の美術品鑑賞について理解を深めていただけるでしょう。題跋の時期と内容を見ると、南巡中に通過した地点に合わせて作品を選び、その地の風景や史実に関連した作品を楽しんでいたことがわかります。乾隆帝お気に入りの作品は常に行李に収められ、繰り返し詩が詠まれました。

 本特別展では行李に収められた書画作品の来歴も合わせてご紹介します。宮中に古くから収蔵されていた作品のほかに、官吏や名士らが出発前や南巡の途中に献上した新しい作品も少なくないことがわかっています。これらの作品からは官吏や名士らの皇帝の好みに対する理解や予想がうかがえ、題跋から乾隆帝の反応もわかります。皇帝とともに旅をした書画作品の境遇はそれぞれ異なります。ただの一度も鑑賞されることのなかった作品もあれば、そのまま行宮(巡幸中に立ち寄る仮宮)や寺廟に置いていかれた作品、宮廷に持ち帰った後に返却された作品もあります。お気に入りの作品は宮廷に持ち帰ってから、複製品が繰り返し制作されました。巡幸の際に必ず携帯した作品もあり、旅行の度に皇帝のお供をして各地を巡りました。乾隆帝の題跋があるこれらの書画作品は、南巡の旅の思い出と記念であるだけでなく、清帝国が北方から南方全域を統治していたことを示す政治的な表徴でもあります。