国立故宮博物院が所蔵する「清明上河図」計八巻は、張択端(12世紀前期に活動)の署名がある作品、仇英(1494頃-1552)と題のある「清明上河図」、「清院本清明上河図」の3種類に分類できます。前者2種は構図や内容を見ると、主に張択端の「清明上河図」を参考にした作品だとわかり、模写や偽作に分類されるものの、それまでの「清明上河図」には見られない街角の新しい風情や時代的な風潮も取り入れられており、宋代のものとは趣の異なる作品となっています。
北宋時代の張択端による「清明上河図」(北京故宮博物院所蔵)は宋代風俗画の大作で、北宋の都「開封」を流れる汴河両岸の繁栄ぶりが描写されています。その写実的な手法や伝奇的な流伝史が鑑賞者と収蔵家の耳目を集めたのはもちろんのこと、芸術史研究者が注目する研究テーマの一つにもなっています。しかし、この作品に関しては議論百出で、諸説が入り乱れる中、「清明上河学」が成立しました。また、歴代の画家たちはそれぞれ違った視点から新しい習俗や文化を取り入れつつ、その時代ならではの「清明上河図」を描きました。模写や模倣作なども加えると、現代まで伝えられた作品は膨大な数に上り、百巻を超えるとも言われます。現在、それらの作品は各地の美術館や個人に収蔵されており、この点からも「清明上河図」の影響力の大きさがうかがえます。
「清院本清明上河図」は画院の陳枚(1694-1745)を筆頭に、孫祜、金昆、戴洪、程志道─5名の画家による合作です。ありとあらゆる文化や習俗が精緻な筆致で丹念に描かれており、画家たちの長所が結集された古典的な名作で、宋代の張択端「清明上河図」に匹敵する見事な作品です。同時代の沈源が描いた「清明上河図」は素材も着色法も「清院本」とは異なりますが、全体の構図や事物、船や車などの乗り物と人物の配置にはほとんど違いが見られず、清朝画院が長巻の大作を製作した際の過程が見て取れます。
本院には質量ともにすばらしい「清明上河図」が収蔵されていますが、全ての作品が展示されることはめったにありません。本年はこの作品群に合わせて清明節にあたる4月に特別展を開催いたします。計8点の「清明上河図」を同時に展示し、美しく華やかな視覚の饗宴をご覧いただきます。明代と清代の画家たちが描いた「清明上河図」の多元的な表情をぜひお楽しみください。