文物紹介
長方形の銀盒で折蓋がついている。蓋に銅胎画琺瑯片がはめ込んであり、華やかな衣服をまとった西洋の男女が木の下で寄り添う様子が点画で描かれている。細部まで丁寧に表現されており、色遣いも鮮やかで美しい。琺瑯片の裏面に「胡思明」という黒い楷書款がある。『清内務府造辦処活計档』に乾隆6年(1741)と7年に粵海関から清朝宮廷造辦処に胡思明という画琺瑯の職人を送ったという記録がある。この乾隆時代の胡思明画琺瑯片銀製鼻煙盒は職人の名前が史料に残されているだけでなく、落款まである非常に珍しい器物である。外観の形状は間違いなく西洋の鼻煙盒を模倣したもので、乾隆時代の広東の画琺瑯職人は西洋の技法や様式も熟知していたことがわかる。