文物紹介
胡桃の殻を使った彫刻作品。上下2段に分かれており、下段に銭紋の花籃が透かし彫りされている。上段には四季折々の花々─春の牡丹や椿、木蓮、月季花、紫陽花、夏に咲く蓮、秋の菊、冬の梅などが透かし彫りされている。このごく小さな空間に花の種類がわかるほど丁寧に彫刻されており、「巧彫」の傑作だと言える。胡桃の上端に小さな穴が一つあり、籃の底に大きめの丸い穴が開けてある。中に香料をつめることができ、紐をつけて扇子の柄や杖の先に下げることができる。二つの殻の継ぎ目には花籃の持ち手が彫刻されている。作者はそこに行草書で「乙丑孟冬日 陳子雲製」と文字を彫り、黒で埋めている。陳子雲は清代早期蘇州の彫刻職人。持ち手に彫ってある「乙丑孟冬」とは、清康熙24年(1685)、または乾隆10年(1745)10月を指す。