文物紹介
この剔紅円盤は永楽時代に制作された椿や牡丹を主題とする剔紅作品とは異なり、菊の花を主題としている。盤の内側だけでなく外側も菊の花や枝葉の彫刻で埋め尽くされている。円い皿形で、口は大きく開き、器壁は浅く、低い高台がついており、全体に赤い漆が塗られている。底裏に装飾はなく、黒い漆が塗られている。底裏の高台付近に針刻による「大明永楽年製」6文字の楷書款がある。この盤は菊の花と枝葉を主題としており、菊の太い枝が下から伸び、左右に分かれている。3本の枝それぞれに満開の花がついており、太い枝はまた上に伸びてから再び左右に分かれ、その枝にも満開の花が咲いている。全部で五つある花はバランスよく配置され、花蕊の模様はそれぞれ異なっている。菊の葉は盤の縁に沿って広がり、上に伸びた葉の先が右に向いている。物象の輪郭は明瞭で、構図にも調和的なリズムが感じられる。花弁の漆面を浅く削ることで、微妙な高さの違いも表現されている。花弁の筋は均等な力で彫ってあり、熟練の技術による簡潔な彫刻はすっきりとして見える。研磨の技術にも円熟味があり、優美な作品となっている。