文物紹介
大きく開いた口、口縁はごく薄く、高台は低い。全体に白釉が施してあり、高台の下部─卓などに直接触れる箇所は無施釉で白い胎が見える。外側の1面に芝仙祝寿図が描かれており、2羽の丹頂鶴が青い湖石に立っている。周囲には青々とした竹や霊芝があり、薄紅色の椿も咲いている。2羽の寿帯鳥(カワリサンコウチョウ)もいて、左の1羽は竹にとまり、右の1羽は翼を広げて羽ばたいており、互いに見つめ合う姿が実に生き生きとしている。別の面には墨書の題句「睡軽旋覚松花落、舞罷閒聞澗水流」があり、引首に赤で書かれた「鳳采」、句末には二つの閑印─「淡然」と「君子」がある。内側は無地無紋となっている。高台の裏に青で書かれた「雍正年製」4文字の宋体款があり、その周りに二重線の方形枠が書き加えてある。造辦処の公文書によれば、雍正帝は雍正朝琺瑯彩磁器の生産や装飾模様を非常に重視し、しばしば院画家に命じて画稿を用意させたという。そのため、琺瑯彩磁器に描かれた絵から、院画の特色を辿ることもできる。この作品に描かれた丹頂鶴は、その姿態や細部の描写のいずれもが郎世寧の画作に呼応している。また、唐朝の詩人鄭谷の名作「鶴」の2句も装飾紋様全体に文芸風の味わいを添えている。皇帝の趣味や好みが影響を与え、極めて平凡な碗に思いがけず詩書画印─4種の要素が揃い、文人らしい風雅な趣がかもし出されている。