酉年大吉-畫雞名品特展,展覧期間  2017年1月1日至2017年3月25日,北部院区 会場 212
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展示概要

 2017年の干支は丁酉です。十二支は雞(鶏)にあたるため、「雞年」とも言われます。中国語の「雞」は「吉」と発音が近く、「公雞」(雄鶏)の「公」と「功」、「雞冠」(とさか)の「冠」と「官」、「雞鳴」(時を告げる鳴き声)の「鳴」と「名」も語呂合わせできることから、鶏は古くから吉祥の象徴とされてきました。このほか、鶏は「功名」や「封官進爵」(立身出世)の寓意としても扱われます。

 人と鶏の共存は人類の経済活動や文化にも大きな影響を与えました。考古学者によれば、河南省安陽市の殷墟遺跡で家鶏の鶏骨が発掘されており、遅くともこの時代には飼いならされた鶏がいたと考えられます。創世神話で万物の誕生に関わる鶏は数千年の時を経て、魔を除け邪気を祓う守護神へと変化し、東から登る太陽を招く太陽鳥の化身にもなりました。そして、鶏本来の習性や体型に合わせて、抽象的な風習や象徴的な意味も示されるようになり、これらを元に宇宙観までもが語られるようになりました。その後、鶏は文・武・勇・仁・信の五徳を表す「徳禽」として尊崇されるようになり、天候不順にも動じない不屈の意思が、理想とされる人格が備えるべき品格の象徴とされました。上述のイメージは幾度もの変遷を経て、原始的な信仰から始まった人類文明の精神面における変転を象徴的に示してもいます。

 「鶏画名品展」では今年の干支である鶏をテーマとして、鶏を主題とした歴代の名品17点を展示いたします。吉祥富貴を象徴する鶏の絵画や織物の饗宴─新年を寿ぐにふさわしい名品の数々をご覧ください。

展示作品解説

宋人

画子母鶏図

 5羽の雛を連れた母鶏が、あたりを歩き回りながら餌を啄ばむ様子が描かれている。母鶏の雪のように白い羽毛はつややかでふっくらとして、その眼差しは慈愛に満ちている。母鶏の翼に庇護されている雛たちはか弱い存在に見える。黒で塗りつぶされた背景により主題である鶏が際立っている。母鶏と雛たちの姿には「五子登科」(5人の子供が揃って科挙に合格する)という寓意が込められている。また、母鶏が雛たちを連れて餌を探す様子は、のどかで楽しげな田園の暮らしも表現している。

 画家は物象の細部まで入念に観察しており、写生的な意味合いがかなり強い。画中に作者の款印はないが、院画の名手によるものであろう。

明 宣宗

画子母鶏図

 明宣宗(1399-1435)、姓は朱、名は瞻基、年号は宣徳。10年の在位期間中に「仁宣の治」と言われる安定期を築いたほか、書画にもその才を発揮した。

 この作品には、雛たちを連れた雄鶏と雌鳥が草地で餌を啄ばむ様子が描かれている。幼い雛を守り育てる親鶏の情愛が紙上に溢れている。日常生活から取った題材を使い、家庭に関する倫理観とその大切さを宣揚する、教化的な意味がある。鶏を描く筆法を見ると、整った筆致で細部まで丹念に描かれている。柔らかな輪郭線に乾筆皴摺が交じり、全体が白粉で着色されており、鮮明な色彩に目を奪われる。また、宋人の工筆写生画の余韻も感じられる。しかし、画風は宣徳帝の画作とは似ておらず、おそらく明代院画家の手による作品だと思われる。

清 居巣

菊下鶏雛

 居巣(1811-1865)、号は梅生、広東番禺(現在の広東省広州市番禺区)の人。詩書画に優れ、山水画や花卉画、鳥禽の絵など、秀麗で脱俗的な画風が特徴で、領南画派の序曲を奏でた画家でもある。

 この作品の款署は乙丑年(1865)─居巣が55歳の時の作品である。月の輝く晩に、雛たちを守る母鶏の慈愛に満ちた姿が描かれている。夜景の静謐な雰囲気を表現するため、着色は極力抑えて淡く仕上げてある。また、大量の墨彩によるぼかしで、あたりを白く照らす月明かりが浮かび上がるように描かれている。居巣の作品は惲寿平(1633-1690)の没骨花卉の画法を多く取り入れており、清新かつ秀雅な趣があると評される。この作品は正しくそれにあたり、その評価に間違いはない。

民国 徐悲鴻

 徐悲鴻(1895-1953)、江蘇宜興(現在の江蘇省宜興市)の人。日本とフランスに留学経験がある。中西美術の良さを備えた教育者であり、中国現代美術の基礎を築いた画家である。

 この作品の雄鶏は首を真っ直ぐ伸ばしてすっくと立っている。燃えさかる火のように赤い鶏冠、漆のように黒く艶やかな尾羽、筆致は奔放だが極端な乱れは見られない。姿かたちが見事に描写されているのみならず、その精神までも捉えており、雄鶏の姿に託して何かを表現しているように見える。右下の角に款識「廿八年残臘悲鴻写」があるが、ちょうど日本軍による侵略時期にあたり、「風雨如晦、鶏鳴不已。」(風雨は夜のように暗く、鶏の鳴き声が絶え間なく聞こえる。)という古典の一節を通して、国家の危機を救うために立ち上がれという、志ある者へ向けての叫びが表現されている。

宋 王凝

子母雞

 王凝(11世紀に活動)、江南の人。熙寧年間(1068-1077)以前に画院待詔を務めた。花竹、翎毛画に優れ、『宣和画譜』には「その筆致には法があり、生彩に富んでいる。」と記されている。

 王凝の伝世作は極めて少ない。この作品には雛を連れて餌を啄ばむ母鶏の姿が描かれている。絵の中心は母鶏で、やや膨らんだ翼の下に8羽の雛が庇護されている。雛たちはそれぞれ違う表情に描かれている。王凝は写生を重んじたようで、細部までよく観察されている。形と精神を備えた宋代院体画の画風である。

明 沈周

 沈周(1427-1509)、号は石田、長洲(現在の江蘇省蘇州市)の人。詩文、書画いずれにも優れ、明四大家の筆頭に挙げられる。南宋水墨画の伝統を継承しつつ、明代の写意花鳥画風を創出し、後世に大きな影響を与えた。

 沈周は独特の手法で日常の風景を描写した。この作品は弘治7年(1494)に制作されたもので、水墨による濃淡乾湿の変化の中に、身体のまん丸い、羽根のふっくらした鶏の質感が簡潔な筆致で表現されている。リアルに描写されているが、形を似せることを目的とはしておらず、筆墨に豊かな味わいがある。『写生冊』第十三開より。

展示作品リスト

品名
形式
本幅尺寸 (cm)
宋人 画子母鶏図
41.9x33
元 張中 寫生花鳥
122.8x43.3
明 宣宗 画子母鶏図
79.7x57.2
明 辺文進 分哺図
63.7x43.9
明 陸治 双鶏図
63.2x31.5
清 陳舒 新年大吉
99x40
清 許佑 籐花乳鶏
120.2x53.2
清 鄒一桂 撫宋画院榴下雄鶏
165.9x89.6
清 居巣 菊下鶏雛
121x49
民国 徐悲鴻 鶏
単品
104x46
宋 王凝 子母鶏
冊頁
42.5x32.4
宋 繡黄筌画秋葵双鶏
冊頁
23.1x21.1
明 沈周 鶏
冊頁
34.8x53.8
明 林達 剪秋羅鶏
冊頁
29.7x40.4
明 朱朗 闘鶏
冊頁
16x50.5
明 周之冕 榴実双鶏
冊頁
22.9x24.4
明 王中立 花塢鳴鶏
冊頁
18x53