清 高其佩 江山春靄
高其佩(1672-1734)、字は韋之、号は且園、南村、遼寧鉄嶺の人。作品の山水には力がこもり落ち着きがあり、人物や花樹、鳥獣や魚、龍もまた簡潔で活き活きとしている。更に高其佩は指頭画(指で描かれた絵)の開祖であり、奇怪な趣は、当時極めて重視された。
本作品は、屏風のように切り立った険しい山々が連なっており、草木が鬱蒼と茂り、遠山の中腹には春靄が立ち込めている。寺の楼閣がその間に入り混じり、渓流に停泊している船の帆や、田畑を耕している農民など、春の気配を感じさせる。作品全体の構成は趣があり、運筆も端正で厳粛。墨の濃淡もしっかりとしており、青みも明るくつややかで、景色を描く優れた能力を充分に証明している。
伝明 沈周 春華画錦
沈周(1427-1509)、字は啟南、号は石田、白石翁、蘇州の人。詩文を能くし、書法に優れ、山水・人物・野菜・花卉・鳥・魚・獣など様々な画題にも長けていた。水墨画の写意や風格の発展に力を注ぎ、元・明代の文人画壇の中で、先人の後を継ぎ道を開く作用をなした人物で、明朝四大家の首とされている。
春の日、山林の中を馬に乗って帰途につく二人の人物がいる。お側付きの童が必死にその後を追っている。画面全体の筆法は、雄大でのびのびとしている。山頂は濃い点苔をアレンジしており、草木の緑鮮やかな春らしさを表現している。当作品には沈周の落款があるが、筆遣いは、やや堅苦しく柔弱で、後世の人が託したものと思われる。
伝五代 董源 江堤晚景
董源(10世紀初葉に活躍)、鍾陵(現在の南京)の、南唐の画家。描かれた江南の景色は景致平淡天真,後世の人は董源を尊び、文人画の宗師とした。
本作品には落款がない。張大千の考証によると、董源作品だとしている。董源を記した歴史書には、「水墨は王維に類し、着色は李思訓」の如し」としている。作者は、披麻皴(山水画法の一つ)で山石の質感を表現し、ついで赭石を下地とし、石緑と石青をだんだんと塗り重ねており、正に春真っ只中の感がある。本作品は董源の作風に近いため、古くから董源と作品とされてきたが、現代の学者により、完成時期は元代前後の作品であることが考証されている。
本作品は張大千の遺贈である。